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星に願いを、よしなしごとを

かがみの孤城

読メモ#かがみの孤城

 

構わないでもらえることが、一番楽で、嬉しい。
だけど、この先もずっとこうなのかを考えると、体がものすごく重たくなる。

 

あらすじ

不登校の中1の少女こころが自室で突如光った鏡に触れると、鏡の中に吸い込まれる。
その先は見た事もない洋館で、こころと同じく不登校の少年たちが集められていた。
こころたちが鏡の世界とオオカミさまを名乗る少女の謎、心に負った傷と助け合い向き合っていくお話

 

感想

学校というものは社会性の略図で、上下関係という理不尽な環境のなかに必然と子どもたちを閉じ込める場所でもある。

主人公の少女こころは学校の中のいわゆる上位にいるクラスメイトに、勝手な言い分でイジメを受けたことがきっかけで不登校になる様が、もう心にぐざぐさ来る。

声の大きいヤツが偉くて、正しい扱いをされるというのは、残念ながら学校の中にかかわらずどこまで境界を広げても真実で、罪もない繊細でな感性の持ち主である少年少はこうして今も昔も誰も知らないところで、涙を呑んできたのかもしれないなと、考えさせられた。

 

俺はもう残念ながら年を取って、子供らしい繊細な感性はなくて、理不尽にあっても、悔しいと思いつつ、まあ生きていればそこらじゅうに散らばってる類のものでしかないと諦めている。

それは老いなのだろうなと、理不尽に諦めきれない子どもたちの姿をみて感じる。

嬉しかったのは、そうした子供のそばにその感性を仕方がないものなんかじゃないと肯定してあげられる大人が物語の中でいてくれたこと。

こういう人が、子どもの成長に必要なのだろうなと。

 

そうした少年少女たちが世界の謎と、心の傷に向き合って理解し合って助け合っていくストーリーは読んでいて救われる気持ちだった。

ただ残念だが謎とギミックはわりと初期の方に見破れたせいで後半の謎の解明パートは、個人的に盛り上がりが薄かった。

オオカミさまの正体も、不登校の子どもたちの時間の違いも、スクールの先生の正体も、主要なギミックは登場人物の少なさもあって、謎がわかる場面でも、うん知ってたってなるのが辛かった。

もう少し翻弄してくれたら、主人公たちと一緒に感動を分かち合えたのになと。

 

でも面白いのはたしか。ページをめくる手が止まらなかった。

さすが本屋大賞でした。